導入事例概要
- クライアント名: 株式会社渋沢栄一学様
- 事業内容: 渋沢栄一の「道徳経済合一」を現代の教育・経済に応用する研究・教育プログラムの企画・開発・運営
- 導入システム: 探究学習AI「渋沢栄一学AI」
- 支援体制: 体験設計からプロダクト実装まで一貫支援
渋沢栄一の思想を現代の教育へ橋渡ししている株式会社渋沢栄一学様。高校生が自分の頭で考え抜くための探究学習AI「渋沢栄一学AI」の設計・開発をコルモアナが担当しました。
教育現場という、AIの答え方ひとつが学びの質を左右する場所に向き合ったプロダクトです。
立ち上げ直後の画面。何のためのAIなのかを一文で伝えてから対話に入ってもらう導線にしている。
課題
生成AIを教育に持ち込むとき、最大の壁は「AIが答えてしまうこと」でした。
探究学習で育てたいのは、課題を見つけ、自分の言葉で問いを立て、行動に移す力です。ところが一般的なチャットAIは、質問すれば整った答えを返してしまう。生徒が考える前に結論が出てしまえば、探究は成立しません。「賢く答えるAI」ではなく「うまく問い返すAI」をどう作るかが、このプロジェクトの出発点でした。
もうひとつの難所が、思想の翻訳です。「道徳経済合一」をはじめとする渋沢栄一の考え方は、そのまま提示しても高校生には届きません。歴史上の言葉を、目の前の地域課題やアイデアと往復できる形にまで噛み砕く必要がありました。
さらに、学校や自治体のプログラムで使う以上、誰でも自由に登録できる作りにはできません。参加者の管理と、当日の配布のしやすさを両立させる運用面の要件も抱えていました。
取り組み
体験の中核に「答えより問い」を据え、AIが結論を出す代わりに、思考を前に進める材料を返す設計にしました。
- 常時3つのサジェスト: 会話のたびに「深める」「広げる」「行動する」の3系統を必ず提示し、次の一歩が途切れないようにしています。「短期と長期で分けると?」「明日できる1アクションは?」といった、生徒がそのまま踏み出せる粒度の問いです。
- 2つのモード: 渋沢栄一の思想・精神・実践を対話形式で深く学ぶ「渋沢栄一学を学ぶ」と、その視点を借りて自分のアイデアや企画を整理・発展させる「渋沢栄一学を活用する」。目的に合わせて入口から選べるようにしました。
- 4つの軸で往復する: 道徳と経済、忠恕と共創、立志と挑戦、公共と貢献。渋沢栄一の思想を4軸に整理し、生徒の考えをこの軸と行き来させることで、思いつきを筋道のある企画へ育てていきます。
- 学年に合わせた言葉づかい: 同じ問いでも語彙と抽象度を調整し、高校生が読んで分かる表現に寄せています。
入口で選ぶ2つのモード。「学ぶ」で思想をインプットし、「活用する」で自分の企画に引き寄せる。
技術面では、特定のAIベンダーに依存しないマルチLLM構成を採用し、応答の質とコストを見ながらモデルを切り替えられる設計としました。
運用面では、教育現場で実際に配れることを優先しています。誰でも登録できる作りにはせず組織単位でメンバーと権限を管理できるようにしたうえで、利用当日は期限つきの共有リンクとQRコードから参加できる導線を用意しました。1台ずつアカウントを作る手間なく、その場で使い始められます。会話履歴と利用コストは管理画面から確認でき、運営側が状況を把握しながら進められる構成です。
成果
1人ずつ
関心と企画に合わせて問い返す
24時間
いつでも思想に触れられる
何度でも
納得いくまで問い直せる
渋沢栄一の思想を伝える手段は、これまで講演や研修といった「人が向き合って話す場」が中心でした。ただ、その場に立ち会えるのは会場にいる人だけです。聞いた話を自分の企画へ引き寄せられるかどうかも、受け手それぞれに委ねられていました。
渋沢栄一学AIは、その場の前後を埋めるために設計しています。講義の前に思想へ触れる入口をひらき、講義のあとも一人ひとりの関心や企画に合わせて問いを返し続ける。全員に同じ話を配るのではなく、その人がいま考えていることに合わせて思想の側を引き当てる形にしました。
これにより、伝える側の手を増やさずに、届く人数と一人あたりの深さを同時に伸ばせる構造になります。思想を届けるために講師の時間と会場の席数を確保する——その前提から自由になることが、このプロダクトの提供価値です。
私たちが引き受けたのは、「AIをどう賢くするか」ではなく「AIにどこまで答えさせないか」という設計でした。人が考える余白を残すためにAIの振る舞いを削っていく。専門領域の知見をAIの応答設計に落とし込むこの仕事は、コルモアナが大切にしている強みのひとつです。
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